ブックタイトル活動報告書

ページ
121/148

このページは 活動報告書 の電子ブックに掲載されている121ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

活動報告書

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

活動報告書

119助けになるのではないかと思い、私の場合は「谷」をキーワードにして東京についていろいろ調べています。さてここからは、写真を見ながら東京の魅力を紹介してゆきますね。この写真では、上野の台地から本郷方向を見たものですが、本郷の手前、写真の真ん中あたりの街並みが何となく窪んでいるのが分かりますかね。ここには谷間が横たわっていて、谷間に広がる町が根津や谷中なのです。谷中とは文字のとおり谷の中の町なのですけれど、反対側の本郷台地には高層マンションが建っているのが見えますね。手前側が上野の台地の際で、お墓やお寺が並んでいる場所です。この写真は四ツ谷の若葉という所にある須賀神社から見下ろしてみますと、やはり真ん中に谷間が横たわっているのが分かります。この谷は鮫ヶ橋谷と呼ばれていました。そして、遠く丘の上に高層建物が並んでいるところが甲州街道、今の新宿通りです。甲州街道は台地の上、尾根筋を選んでつくられていました。先ほど紹介した上野台地からの眺めや、須賀神社からの眺めは、どことなく似ていますよね。谷間がつくる景観構造だからです。「東京には谷が多い」というのは、なにも私が最初に言い出したわけじゃなくって、永井荷風も『日和下駄』の中で「坂と坂との差向ひが急激に接近していれば、景色はいよいよ面白く、市中に偶然温泉場の町が出来たのかと思わせるような所さへある」と書いていました。谷の町って意外と気が付かないのですけれども、歩いてみると隠れ里のようにあちこちに谷間の町が点在しているのが分かります。それを一つ一つめぐってみると東京の知られざる一面を垣間見られると思っています。武蔵野台地に刻まれている谷間は、非常に密に分布しているのが特徴です。谷筋は鹿の角、あるいは木の枝のように枝分かれしていますけれども、その枝分かれした谷の先端部分が、3方向を丘で囲まれたスリバチ状の窪地になっているケースが多い。窪地の形状は、山の中で見られるV 字状の谷ではなくて、平らな台地をスプーンでえぐり取ったようなU 字型の窪となっています。後で紹介しますけれども、これは武蔵野台地の地質に由来する特徴で、ここでは、平らな台地とえぐりとったような窪地ということを覚えておいて下さい。その谷の先端部分で谷の頭と書いて「谷頭(こくとう)」と読みますが、その谷頭を勝手に「スリバチ」と名づけてしまいました。群馬から出てきた田舎者が名付けるのも畏れ多いのですが、批判も顧みず、第一印象からつけたスリバチの名を言い続けています。「学会」とすれば、格好よさそうだと安直に思い、2003年に私の友人である石川初氏に「スリバチ学会やりたいんだけど」って趣旨を説明したら、彼はすぐに理解してくれて、「やろう!やろう!」と盛り上がってくれました。石川氏が声を掛けると女の子がいっぱい集まってくるので、最初のフィールドワークはこんな感じでした。「石川初氏を知っているよ」という方はどれぐらいいらっしゃいますかね。彼はとってもユニークなやつで、GPS を持ち歩くと、歩いた軌跡が記録されますが、その軌跡のラインを使って、町の中にウサギやカメ、ライオンなどを描く試みを続けています。彼は「ナスカプロジェクト」と呼んでいます。彼は同じ会社の同期入社、昔から会社でばかをやっていた仲間で、「石川氏なら自分の思いつきの活動にも、すぐ乗ってくれるだろうな」ということで声を掛け、2人でスリバチ学会を始めたのが2003年でした。地形の凸凹に着目すると、いろいろ気づくことがいろいろとありそうです。町の歴史や文化が見えてくるかもしれません。そこで、カシミール3D を使って、東京と大阪の中心部の標高データを着色したものを見比べてみましょう。大阪では、上町台地と大川がぶつかる辺りに堀割が見え、台地の突端が大阪城であることが分かります。東京と大阪の標高差を比べてみますと大阪のほうが全般的に東京よりも低くなっています。上町台地の左側部分に若干の微高地があり、そこが今の中心市街地になっています。大阪は「なにわ(浪花)」とも呼ばれますが、由来がなにかをご存知でしょうか?大阪城の足元を流れる大川は人工的に掘られた水路で、潮の満ち引きのときに海の水が勢いよく、ここを通過します。海の水が流れると「浪(波)」の「花」が咲くということで「なにわ」(浪速・浪花・難波)という名前がついたというふうにも言われています。このように地形でそれぞれの都市を見ていくと、知名の由来であったり、育まれた文化であったり、都市の特徴が垣間見られるかな、とも思います。東京スリバチ学会は、学会を名乗りながらも町歩きを楽しむゆるい会です。もし興味を持たれたらFacebook やブログなどをご覧ください。Facebook やブログでスリバチ学会のイベントを告知しています。「何月何日、どこどこに集合!」と声を掛けると、みんなぞろぞろと集まってきて、見知らぬ者同士で歩くといった感じの何ともアヤシイ学会。私は特に解説もしないで先導するのですが、地形的な面白さに気づいたり、スリバチ地形を見下ろせる高台に立つとみんな「おおっ」とか言ってくれるのが嬉しいですね。ミステリーツアーのようですが、そんな不安なツアーに、よくみんな付いてきてくれるなあ、と思います。事前に下見をするわけでもないので、毎回行き当たりばったり。行き先も告げるわけでもなく、ゴールも定かでない。単なる凸凹歩きですから、必ずクライマックスがあるわけではありません。だらだらと歩いているだけなのに、参加者自身が楽しみを発見しながら、会を盛り上げてくれています。ある時、大学の先輩から「スリバチ学会なら、先輩たちと町歩きイベントをやらないか」ということで、東京の日本橋あたりの微地形を探る町歩きをやりました。これがその時の写真。山の手は土地に起伏があって分かりやすいけれど、日本橋辺りの下町低地にも微妙な凸凹があり、屈んで地面に顔を近づけたりして、みな一生懸命に地形の凸凹を確認しました。完全に怪しいですよね。私はこんなことをさせて密かに喜んじゃっています。去年か一昨年あたりから「山ガール」が流行っているじゃないですか。すごく華やかな感じでいいですよね。いっぽう自分たち、微高地を愛でる人たちは、地味な、「谷おやじ」と言えそうですね(笑)。そうこうしているうちにテレビ番組「タモリ倶楽部」から声を掛けていただいて、2012年、東京スリバチ学会の研究発表ということで番組に出演し、新宿区の荒木町を石川初副会長とともに歩きました。タモリさんは漫画家の江川達也さんと「タモ江地形クラブ」というのをやっていて、「『タモ江地形クラブ』に対抗する変なやつが居るぞ!」ということで東京スリバチ学会を紹介していただきました。その後2014年11月、番組に再び呼んでいただきました。杉浦貴美子さんという女性がこのときの主役で、彼女が「地形パティ